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僕がペットになった日

⚠︎いろいろ許せる人向けです。



御影くんは僕に初めてできたお友達だった。

学校に編入したての僕が話しかけても、クラスの子たちには何故か無視されてしまって、いつまで経っても友達なんてできなかった。

お母さんに「すごいお家の子ばかりだから、たくさん友だちを作りなさい」って言われていたから、言いつけを守れないことが悲しくて、その日も一番長い休み時間は校舎の外の木に隠れて一人で泣いていた。

そんな僕に御影くんはハンカチを差し出してくれたんだ。

別のクラスだったけれど、御影くんのことは知っていた。

お母さんが特に仲良くしなさいって言っていたから。

それに御影くんの周りはいつも人が絶えなくて目立つ。そんな彼がこんなところにいるのが意外だった。

「岡本くん、だったかな?どうしてこんな所で泣いてるの?」

隣にしゃがみ込んで頭をよしよしされる。

恥ずかしさと、嬉しさ、そしてこの学校に来てからの悲しさなんかを思い出して、顔が熱くなって涙がさらに出る。

差し出された綺麗なハンカチは受け取ることができなかった。

ぐちゃぐちゃの顔を見せたくなくて、でも質問には答えないとと思い、俯いて嗚咽を漏らしながら言葉を紡ぐ。

「ひっ……と、ともだちが、あっ……ひっ、で、できなく、てっ……」

言い終わった瞬間にしゃくり上げながら泣いてしまう。

「みんな親に言われたことを信じて、君自身を見ようともしてないんだ」

「ふ……ふぇ……?」


その日から全てが変わった。

それほどまでに御影くんの力はすごかった。

取り巻きとしてそのそばにいることを、周りがたとえよく思っていなかったとしても、他ならぬ御影くん自身が許してくれている。

友だちは相変わらずいなかったけど、無視される事はなくなった。


御影くんとお友だちになれて嬉しかったのはそれだけではない。

御影くんのお家に遊びにきてもいいと招待されたとお母さんに言ったら、デパートで着ていくものを一式揃えてくれて美容室にも連れて行ってもらった。一日中お母さんと一緒にいられてすごく嬉しかった。

それに仕事で忙しいお父さんにも、御影くんによろしく言うようにと言われた。声をかけてもらえたのは久しぶりのことだった。


その日は一張羅の服と、艶々の革靴を履き、そして母が好きな洋菓子店のケーキをお持たせしてもらった。

なんと僕の家まで御影くんのお家の黒くてピカピカの車が迎えにきてくれた。車の運転手をしてくれた執事さんが案内もしてくれて、玄関では御影くんがお出迎えしてくれた。

とても広いダイニングに案内されて、今日はとても機嫌がいい御影くんを向かいに見ていた。

初めての御影くんのお家でヘマをしないかドキドキしていたら、執事さんが紅茶とお持たせのケーキを持ってきてくれた。

だけど給仕をするその手が震えていて、ティーカップが音を立てていたのを覚えている。

ケーキを食べてお茶を飲んで、そこからの記憶はない。



次に目が覚めたら、まず笑顔の御影くんが目に入った。

「あ、起きた」

「あ……!僕……」

眠ってしまっていたことに謝ろうとして初めて異変に気づいた。

全裸で手と足がバンドみたいなもので拘束されふかふかなものの上に転がっていた。

場所もさっきまでいたダイニングではなく、よくわからない器具だったりいま僕が乗っている大きなベッドがある、窓のない部屋だった。

目まぐるしく眼球が動く中で、ベッドサイドにいる御影くんの下で何かが蠢いているのに気づいた。

「な、なにこれ……」

その大きな塊は人だった。いや正しくは人が動物の姿に擬態したような何かだった。

頭には黒の尖った三角耳と目隠しをつけていて、口には何かを咬まされていた。

服はなにも身につけていないが、お尻からはピンと尖った黒の尻尾のようなものが突き出ていた。

その人間が四つん這いになって、御影くんの下にいた。

何かはわからないがその異様さはわかった。

「ああ、これ?これは父さんのペット」

笑顔で人間をペットという御影くんに今まで御影くんに感じたことのなかった恐怖を感じた。

「僕も父さんみたいにペットを飼いたくて探してたんだよね」

御影くんがベッドに乗り上げて僕の頭を撫でた。

「ひっ……!」

今まではすごく嬉しかったはずなのに、今はそれがとても怖い。

「ペットのくせにご主人様を嫌がるなよ!」

優しい顔だった御影くんが見たこともないような怒った顔で僕の耳を掴む。

その顔は悪い成績を取ったときのお母さんの顔に似ていた。

「ごめんなさい!ごめんなさい、ごめんなさい……!」

いつものように平手が飛んでくるのを身構えて縛られて不自由な手で頭を庇う。

「……ペットを飼ったらしつけをしないとね」

腕の隙間から見た御影くんはまた笑顔に戻っていた。

「知ってる?犬や猫にもその家で序列があってね、」

御影くんは僕をベッドから引きずり下ろした。

「マウントっていうらしいんだけど」

恐怖に固まる僕を四つん這いにさせて言った。

「先輩ペットにしつけてもらおうね」


今、僕は先輩ペットとやらに四つん這いになった背中からのしかかられて震えている。

「腰触れよ園田。犬みたいに大人のお前ですら逆らえないこと教えてやって」

ベッドに腰かけた御影くんが足で先輩ペットとやらを押す。

口にものを咬まされて開きっぱなしの口からだらだら溢れる唾液がコンクリートの床に落ちる。

「オェエウ、オェウ……」

ずっと耳元で繰り返される言葉がごめんねという言葉だと気づいたのはその時だった。そして彼があの執事の男の人だとも。手はブルブルと震えていた。

「僕が満足できなかったらお前のことをお祖母様に言うだけだよ」

「オエウェ……オェウ……」

「ひぃっ……」

股に熱を持ったナニカが触れたのが分かった。

湿っていて芯を持って硬いソレが、閉じさせられた股の間を通る。

「た、助け……」

「あは、ちゃんと薬聞いてるね」

「オォッ……ウゥ……」

この状況に自分を貶めた御影くんに救いを求めるが、それは叶えられない。

状況を楽しんでいるようで、ベッドの上で組んだ足の上に腕をついて顎を乗せていた。

学校では見たことも無いような姿だった。

「オエウェ、アエッ」

「ごめ、ごめんなさい、たすけて……たすけて……」

もう何に謝っているのか誰に助けを求めているのかもわからなかった。

ただ両手の指を組んでそこにおでこを乗せてひたすら震えて耐えていた。

「アイオ、ゥウ、アイオウ」

「うっ……うっ……」

「ウゥッ……」

太ももの間に熱い飛沫が飛ぶ感触がした。

「ハッ……アゥ……オエウェ……」

「……っ」

「どいて」

その一声で上からのしかかっていたものが無くなった。

僕はまだ同じ体制で震えていた。

「怖かった?ごめんね?……君が逆らわなかったらもう怖い思いはさせないからね」

頭を撫でられて恐る恐る顔を上げる。優しい顔をした御影くんが怖くてまた泣いた。

「よしよし、もう怖くないからね。……園田、部屋の後始末を」

園田と言われたその人はもう目隠しも口かせもしていなかった。

「……はい」

その時はもう御影くんに抱えられてその表情は見えなかったけど、園田さんの声色は沈んでいた。


僕を軽々と抱えた御影くんはその部屋備え付けのお風呂で汚れた僕を洗った。

脱衣所には僕が着ていたのとは別の清潔な服が用意されてあって、それを着せてもらった。

何をするのにも御影くんは僕の世話をしたがった。

あの窓のない部屋は地下室だったらしく、部屋を出るのに階段を登るにも御影くんは僕の手を引いてくれた。

「岡本くんのお母さんには今日は家に泊まるって言っておいたから」

そう言われて、僕はうなずくしかできなかった。園田さんが用意してくれたらしい夕食も、御影くんの手ずから食べた。

園田さんはその脇で黙って遠い目をしていた。

その後は一緒にお風呂に入れられて、一緒の布団で寝た。

犬になればいいのかなと思って床で寝てもいいですかって聞いたらベッドの中に引き摺り込まれた。

「映画の中では犬とこうやって眠るんだ……」

僕を抱きしめて撫でる手はとても優しい。

寝息が聞こえてからも僕は今日の出来事やこの屋敷のことに思いを巡らせて眠れなかった。

広さの割に園田さん一人だけの使用人、ご両親の姿はなく、御影くんただ一人の夕食。




今でも御影くんがとても怖かったけど、月明かりに照らされた寝顔が苦しそうで、滑らかな頬に手を当てた。

眉間のシワは消えていた。


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