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田舎っ子と都会っ子

茹だるような暑い夏休みのことだった。

お母さんは海外でお仕事、お父さんは仕事が忙しくてあまり家にいられない。

だから僕は同い年のいとこの家に二週間ほど預けられることになった。

お父さんが印刷してくれた乗り換え案内と睨めっこしながら電車をたくさん乗り継ぐこと二時間。

一回目の乗り換えは大都会。二回目の乗り換えでは高いビルがなくなって、三回目の乗り換えで景色は山と田んぼばっかりになった。

初めて乗ったワンマン電車を降りればほとんどの店のシャッターが下りたなけなし程度の商店街。

タクシーの一台も止まっていないロータリーに目をやると、お正月とお盆にある親戚の集まりで見知った顔が二つと、軽トラが停まっているのが見えた。


「おーい!こっちこっち!」

おじさんといとこが手を振っているのが見える。二人とも僕の通う学校でも、街中でも見たこともないくらいこんがりと焼けている。

ペコリと頭を下げる。

二週間分のお泊まりセットが入ったリュックがずるっと背中からずり落ちた。





「うわーすごいね!僕、こんなすごいとこはじめてきた!」

「そうか〜?ただの裏山の川だぜ?」

「うん!すごい水がキラキラしてて綺麗だし、プールと違って人もいないし、すっごく気持ちいよ」

「入ったらもっと気持ちいいぜ?湧き水だからめちゃくちゃ冷たいんだ」


「いいの?」


川に入るなんて初めてだ、しかもいとことはいえ友だちとだから尚更嬉しい。

習い事以外で友達とプールになんて行ったことがないし、家族で行くのも年に一回ほどだから。


「お前顔に出やすいのな、うちの犬みてぇ!」


日に焼けた顔から覗く白い葉が眩しい。


「そんなの初めて言われたよ……あ、でも水着持ってきてないよ?」


「んなの裸で泳げばいんだよ!」


川辺の木陰で服を脱いで木の枝にかけておく。

最後にパンツだけを残してもじもじしてると後ろから水しぶきの音が聞こえた。


「はやくこいよーきもちいいぜ!」


脱がなければ濡れてしまうし、脱いだら恥ずかしいなんて葛藤はその一言で吹き飛んだ。



「はあー楽しかったー……」


川辺の砂利がほっぺたにつくなんて構わずに浅瀬に倒れこんだ。

小さなダムみたいなコンクリの上から飛び込んだり、向こう岸までどっちが早く着くか競争したり。

二人きりの天然のプールで思い切り楽しんだ。

「もうへばってんのか?」


隣でバシャっと音が聞こえて顔を向けると、日に焼けたニヤッと笑う顔。

「全然疲れてないの?すごいね……」


ふにゃあと顔がゆるむ。体力がないのは認める。

塾にそろばん、ピアノに絵画教室。習い事はたくさんしてるけど、運動系はスイミングスクールのみだった。

「おうよ!畑の手伝いで鍛えてっからな!」


「えらいなー……」


日差しを背にしていることだけが理由ではなく、眩しさに目を細めた。


「……わっかんねーなぁ。なんでお前学校で友だちいねぇんだ?」


こぼれたみたいにいとこの口から出た言葉に、心臓のあたりが氷で冷やされたみたいに痛んだ。


「な、んで……なんでなんだろうねー……」


「お前いいやつだし、……かわいいし……」


なんだか悲しくて涙が出てしまう。周りの声も聞こえない。

やっと仲良くなれた友だちに情けない顔を見せたくなくて、逆方向に顔を向ける。


「お、お前もしかして泣いてんのか……?」


「泣いてない!泣いてないからみないで……!」

肩を押されて川原に仰向けに転がされる。

真上にあるいとこの目から涙でぐちゃぐちゃの顔をかくしたくて、手で顔を覆う。


「ごめんって……!泣くなよ……」

「……泣いて、うっ、なっ……ひっ、いって、く……」


「あーもう……あ!いいとこ連れてってやるよ!地元の友だちにも教えてないとっておきのところ!な!おまえが、特別な友だちだから……」


「とくっ、特別っ、て、親友って、ひっく、こと?」


「そうだよ。親友だから。だから泣きやめって……」


「ん……」


頭を撫でられるうちに、しゃくりあげながら泣いていたのがだんだんとおさまってきた。

涙が止まって、いとこの顔を見上げると物心ついてから今まで、ほかの人に向けられたことが無いくらい優しい顔があった。



急な山道を登った先に、鉄パイプの土台の上に古いログハウスが建っていて、ハシゴがかけられていた。


「ほれ、手ぇかせ」


「うん、わ!……っと、す、すごい……!」


風化しはじめた木の扉の中は、低めの天井に室内のほとんどを占める中の綿がところどころ飛び出たソファーが目を引いた。

壁には小屋の中では新しめの電池式ランプがあった。

「すごいね、秘密基地みたい……」


「みたいじゃなくて秘密基地なんだって!」


「すごね、ほんとにすごい。うらやましいよ……」


「へへ、探検してたら偶然見つけたんだ。昔このへんが狩場だった頃の小屋だと思うんだけど、だれも使ってねぇから俺がいただいてやった!」


誇らしげないとこがソファーにボスッと座る。ほこりが舞って、お母さんが眉間にしわを寄せる姿が頭をよぎるけど、気にせずにその隣に座った。


「僕ね、親友にすっごい憧れてたんだ。だから君が親友って言ってくれてすごく嬉しかった」


「お、おうよ。俺も、そのなんだ、お前はなんか他の奴らとは違うんだよな……」


自分に微笑みかけるいとこを見て、心臓のあたりがふわふわと温かい感じがした。

「……僕ね、もともと引っ込み思案だから友だちが少なかったんだけど、仲良くしてる子がいたんだ……」


いつもクラスの中心にいるような男の子だった。

背も高くて運動も勉強もできる。ちょっと悪ぶってる子も彼には一目を置いて接するし、だけどクラスの隅で静かに本を読んでる僕のようなタイプにも笑顔で話しかけてくれる子だった。

そんな子が休み時間は必ず僕のところに来てくれて、休みの日には遊びに誘ってくれたりもした。

ゲームセンターもあの子に連れられて行ったのが初めてだった。

他の子たちがアーケードゲームにはしゃいでる中にはどうしても入れなくて、何気なくUFOキャッチャーのなかの見覚えのあるキャラクターのマスコットをぼーっと眺めてただけだけど。

でもあの子はいつの間にとったのか、帰り際に他の人には見えないように、そのキャラクターのマスコットをくれた。

そんなに物欲しそうに見えたのかなって恥ずかしくなったけど、これが仲の良い友だちなのかって思うと心が温かくなったのを覚えてる。

でもそんなふうに思ってたのは僕だけだったんだ。

しばらくしてその子の友だちがぼくにもかまってくれるようになってから、あの子はどこか冷たくなった。

自分の友だちとあんまり仲良くしないでって直接言われたこともあった。


気づかないうちに僕が何か気に障ることをしてしまっていたのかもしれない。

流行の話題にはあんまりついていけなかったからなのかな。

みんなが持ってるスマホも持っていなくて、塾が終わった時の報告用に子供ケータイしかもっていなかったし、MYTUBEを見るのもフィルタリングがかけられた家のパソコンだけだった。

習い事をたくさんしてたから放課後に遊びに誘われても断ることが多くて、ノリが悪いって思われていたのかもしれない。

それからも時々何か言いたげなあの子の視線を感じたけど、教室ではそれまで以上に存在を消すことを徹底するようになった。

仲良くなれたと思ったのは自分だけで、相手はそう思ってなかったなんて、こんな苦しい気持ちになるくらいなら、もう期待なんてしたくなかった。だから逃げてしまった。

気まずいままその子と話すことなく、夏休みを迎えた。

他に友だちもいなかったし、お父さんもお母さんも仕事で忙しい。


今まで誰にも言えなかったことをたどたどしくだけど言葉にした。


「……」


「だからさ、うまく言えてるか分からないけど……。君が親友だって言ってくれたのがすっごい嬉しかったんだ……」


もう自分だけが一方的に仲がいいと思って期待するのは嫌だった。

だけど君が言葉にしてくれたから……。


照れくさくてうつむいていた顔を上げると、思いのほか近くにいとこの健康的な色をした顔があった。

ぼーっとその眼を見ていると、ほっぺたに自分のものよりも硬い手が触れた。

「……ん、」

唇に何かやわらかいものが触れたかと思うと、さっきよりももっと近くにいとこの顔があった。

「な、んで……?」


「あー、これは、なんだ、えーっと、つい……っていうかなんだ、あれだ、特別っていうかそう!特別!特別な親友だから!」


こんがり焼けた顔でもわかるくらいほっぺたが赤い。

あたふたしてる姿がかわいくて、つい笑ってしまう。

「ふふ、そっかぁ、特別な親友……」

ついに顔を隠してボロボロのソファーの手すりに仰向けに項垂れたいとこに、いたずら心がわく。


「……んぇ!?」


「ふふ、お返し。僕も君が特別だから……んっ」

返り討ちとはこういうことを言うんだろう。さっきの川辺とは逆の体制で僕がいとこを押し倒したような体制で、顔を固定されて何度も何度も唇が押し付けられる。

「ん、んんっ……」


僕よりも筋肉質で日に焼けた脚が僕の身体に絡んで引き寄せられる。









唇が触れている間は息ができなくてすごく苦しい。

チューの嵐がやんだ後には僕はぐったりしていとこの上に倒れこんでしまった。


「はぁ、は……」


「……こういうときの息継ぎのタイミングわかんねぇな……」


「僕も……初めてだもんチュー……わっ!」

ぐるんとソファーの上でひっくり返される。視界はいとこのどあっぷでいっぱいになった。

顔の両横のいとこの手に体重がかけられてソファーが沈む。


「俺も、初めだ……一緒に練習しようぜ……」


「ん、ふ……」


「ん。鼻で息するといいっぽい……」


唇に触れたり、なめられたり甘噛みされたり。鼻同士やすべすべなほほをこすり付けあったり。

ふわふわして気持ちよくて、何も考えられなくなる。

身体の中心に熱が集まって、もじもじとしてしまう。

あれ、これって友だちっていうよりも……っていう疑問なんてどうでもよくなる。


外ではまだセミが鳴いている。

肌が触れあっている部分が汗ばんでくるのも構わずに、脚をいとこの身体に絡める。おちんちんが硬くなっていることは知られたくなくて、へっぴり腰で。

「ほんとだ、鼻で息すると苦しくないね……」


「な、次、口開けろよ……」


「え?」

また口づけが降ってくる。さっきと違うのは、口が食べられるみたいにされてベロが唇をノックしていること。

驚いて口を開くとそれが口の中に入ってきた。


歯がごちごち当たるのなんて構わずに逃げ回る舌が追いかけられる。口の中のありとあらゆるところに舌が這い回る。

鼻で息、鼻で息と先ほど学んだことを必死に考えるけど、ままならない。

「んぁ、ふ、ん……」


上あごを舌先でくすぐられた時、背筋がぞわぞわして、思わず目の前のTシャツにすがってしまった。

その手がつかまれ指をからめられてソファに縫い付けられた。


そこから上あごのざらざらのところばかり舌で擦られる。

そのたびに腰が揺れてしまう。おちんちんが硬いことを知られたくない、なんて思考は頭の隅に追いやられてしまっていた。

もはや筋肉質なお腹にちんちんが擦れるのがたまらなく気持ちいい。

「ん、む……お前もたってんのな……」

「あ、やだ、触らないで……!」


つないでいた手が解かれて、ズボンのさらに内側、パンツの中まで手が入ってくる。

「あ、あぁ……!」

硬い手が触れた瞬間、初めての感覚が身体をはしり、脚を縮こめてあり得ないくらいのけ反ってしまった。


「あ……あ……」


「うお、すっげぇどろどろ……俺が精通した時のみたい……」


「ふ……うぅ、やめてって、言ったのにぃ……!」


「えぇっ!?なんで泣くんだよー……」


学校の性養育でそれについては知っていた。でも自分には遠いことのように思ってた。周りが下ネタで盛り上がってた時も、いたたまれない気持ちになりながらその場にいた。まだあの子が仲良くしてくれてた頃は、そんな様子に気づいてさりげなく話題を変えてくれたりしたな。


なんて思考が逃避するけど、頭を撫でる手の感触に現実に引き戻されて、目の前にある顔を見やる。


「ほれ、俺もたってるし!同じだろ」


「ごめん、びっくりして……自分が精通するとおもってなくて……」


「ほんとに精通だったのか!?お前オナニーしねぇの?」

「う、うん、……なんか、こわいもん」


「お前人生半部以上損してるぜ?お手本みせてやるよ」


いとこが膝立ちになって僕の精液がついていない方の手でベルトをはずそうとしてるけど、片手でうまくいかないようだ。


「くそ、うまくいかねぇ。なあ、ズボン脱がして」


「え、う、うん……」


上半身を起こして僕の上で膝立ちになるいとこのズボンを下ろす。

パンツもいっしょに脱げて、ぽろんと目の前にちんちんが現れた。

僕のよりも大きくて、肌の色同様濃かったけど、皮から除く先っぽだけはピンク色だった。

「ほれ、お前も脱げよ」


「うん……」

ここで断るなんてできなかった。せっかく僕のために教えてくれようとしてくれているし、断ることで嫌われたくなかった。

腰を浮かせて、ズボンを脱いだ。

不安に思いながら見上げると、笑顔だけどなんだか熱っぽい目でこちらを見る顔があった。

目が合うと、僕の太ももの付け根あたりに腰が下ろされた。

おちんちん同士がすごく近い。


対照的な色をしたそこから目を離せなくなっていると、いとこが精液がついた方の手でおちんちんをまとめてにぎってきた。


「んぇっ!?ちょっ……!」

「こうやってぬるぬるにしてこすんだけど、皮で擦るのはだめらしい……」

「あっ、あっ、まって……!」


「な?気持ちい、だろ?」

「ひゃっ!あ!あ!」

指を筒の形にして、めちゃめちゃに擦りながら腰を振られて、経験したことのない快楽に腰がびくびくと跳ねてしまう。


「あっだめっへん!でちゃう!なんかでちゃう!」


「俺も、出そう……!」


先っちょの敏感な部分を小刻みに擦られる。

内腿とちんちんが痙攣して足の指先にまで力が入る。


「ああぁぁああ!」

「うっ……くっ!」

お腹に生暖かいものが飛び散る感触がする。






「はー……はー……」

「はっ、ふ、……ん、あ……」

ぶるぶると震える手がゆるゆるとちんちんを絞って残った精液を出し切らせる。


「やべー今までで一番気持ちかったー……」


どさりと僕の横にいとこが倒れこむ。

ちゅ、ちゅ、と頬に唇に柔らかな感触を受けて、僕は眠気の波にさらわれた。





気が付くと小さな窓から差し込む光はオレンジ色で、隣で気持ちよさそうに寝むるいとこを起こして急いで下山した。

途中に川で汚してしまったものを洗っていたら山を下りた頃にはあたりはもう暗くて、家に着くころにはすっかり日が落ちてしまっていた。

ばんごはんの時間なんてとっくに過ぎていて、僕らは心配してくれたおじさんにかなり怒られたのもいい思い出だ。

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